米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の発効が7月1日に迫るものの、新協定が「新NAFTA」としてのみ認識されており、主要な変更点を十分に理解していない企業が多いようです。USMCAとNAFTAには類似する点もありますが、主要な相違点やビジネスへの影響にも注意を払わなければなりません。多くのお客様で、USMCAのビジネスへの直接的な影響をめぐっての混乱が顕著になっています。
よくあるお問い合わせ
次のような問い合わせを様々な企業からいただいています。
1.顧客から送られてくる原産地証明書のフォーマットが「NAFTA」から「USMCA」に置き換えられているのみであり、NAFTAのもとで提供していたものと同じ情報を提供するよう要求されています。従来通りの情報を提供していれば、問題ないのでしょうか。
必ずしもそれで良いとは限りません。USMCAにおける原産地証明書の公式フォーマットは未だ発表されていませんが、取引先の企業が記入できるよう、独自の書式を作成している会社もあるようです。ただし最終的には、USMCAの附属書5-Aに最低限必要なデータ項目として列挙されている9つの事項を提出することが義務付けられています。
2.これまで製品に割り当てていた統一関税表によるコード (HTSコード) はUSMCAでも変わらないと考えて良いでしょうか。
いいえ、HTSコードは定期的に変更・更新されるものです。協定の施行が緩やかだったNAFTAとは異なり、USMCAでは監視や遵守のレベルが強化されるため、最新のデータをもとにHTSコードがきちんと変更・更新されているか、確認しておくことが重要です。
3.自動車部品サプライヤーは7月1日よりUSMCAを遵守しなければならないのでしょうか。もしくは適用の延期はありますか。
どの産業においても、全ての企業は、USMCAは7月1日に発効すると考えて行動するべきでしょう。自動車業界は、新しい原産地規則の適用を遅らせることを検討するよう働きかけていますが、それに関する公式な情報はどの加盟国からも発表されていません。協定の遵守に向けて前もって準備をしなければなりません。
4.NAFTAの認証を受けている製品で、年中を通しブランケット期間が規定されているものはどうなりますか。
7月1日にUSMCAが発効すれば、これらの認証はもはや有効ではなくなりますから、USMCAの書類要件を満たすようにしなければなりません。
5.弊社は国内販売のみを取り扱っていますので、これは顧客サイドのみの問題ではないでしょうか。
製品の原産地を証明するため、貴社の顧客はデータや書類を入手しなければなりません。ですので、そのようなデータや書類の提出を貴社の顧客から依頼される場合に備えてください。貴社自身が税関当局の監査を受けることとなった場合に必要となる書類でもあります。
6.書類の保管は通関業者の責任ではないでしょうか。
製品の輸出入について、関連する書類の保管や追跡を通関業者が行っているのはよくあることですが、各企業は、適正な書類が保管されていることを確かめるべきでしょう。書類の提出義務は通関業者ではなく企業自身にあるというのが税関当局の見解です。
7.自動車産業に適用される時給16ドルの労働比率要件には何が含まれますか。
時給16ドルが意味するものは生産に関わる賃金で、部品等の生産に直接的に携わる従業員の平均基本時給です。福利厚生目的の給付は含まれず、経営者や研究開発部門、技術部門、あるいは部品の生産または生産ラインの稼働に直接関与しない従業員の給与も含まれません。
まとめ
USMCAにおける協定の施行が、単に認証を発行するだけのNAFTAとは大きく異なることを理解することが欠かせません。正しいHTSコードを使っていること、そのコードに対応する原産地規則を理解していること、原材料や完成品の原産地を有効に文書化していることを確かめなければなりません。そうすることで初めて、顧客や税関当局の要請に従う準備ができたことになります。
今すぐ準備に取りかかり、将来起こりうる問題を回避しましょう。HTSコードの見直し、新しい原産地規則による影響の検討、その他USMCAの遵守に関するお問い合わせは、どうぞお電話で。喜んでご支援いたします。
さらに詳細な情報は、オンデマンドのウェビナー“Ready or not: The USMCA is coming to replace NAFTA.”でもご覧いただけます。