ヘルスケア関連の会社において、EHRシステムの導入をもしご検討されているのであれば、TOC-つまり、システムの使用期間中に発生するテクノロジーやサービスに関連する全てのコスト-という決まり文句をぜひ覚えておいて下さい。TCOには、システムの導入・運用・維持・EHRソリューションのサポート時にかかる全てのコスト(短期的と長期的なもの並びに直接的又は間接的なもの)を含みます。
EHRシステムという言葉に馴染みのない方又はEHRの新たな導入を検討されておられる方は、組織が将来負担するTCOを算出する前に、以下でご紹介する重要な質問をご自身にぜひ問いかけてみてください。
- ライセンス料はどのように計算されるのか?各ベンダーは、独自の方法でライセンス料を計算しています。この計算にあたり、拠点数及び/又は各病院のベッド数、オーダー入力や患者情報を記録するスタッフやプロバイダーの人数、外来診察の規模や退院数、並びに処理された請求書の数等が考慮されます。ソフトウェアの価格設定は際限がないため、総コストを計算する際、その内容及び詳細の全てを確認することが重要です。
- どのEHRモジュールが必要なのか?EHRシステムは、顧客のニーズに合わせて設計されています。各モジュールは別々に認可されているか、又は総コストに含まれています。一般的なモジュールには、臨床医のオーダー入力、収益サイクル、情報の公開、患者ポータル、臨床検査情報システム、イメージング、薬剤管理、及び外科情報システム等が含まれます。
- EHRシステムの情報を他のシステムと共有が必要な場合、どのように対処すれば良いのか?通常は、医療情報交換、財務システムやサプライヤーの情報交換、資格/医療必需チェッカー、請求書や請求システムとの連携等を通して、患者の情報をシェアします。これらの連携には、追加の開発コストが発生し、システム間で情報を移行するための追加コストも発生する可能性もあります。
- EHRを採用するにあたり、どのようなハードウェアが必要となるのか?通常は、提供者(ベンダーまたは第三者)側で稼働しているハードウェアを使用する「SaaS」(Software as a Service:サース)、又は自社のIT部署が自社運用する「オンプレミス」のどちらかを選択します。オンプレミスを選択した場合、データセンターを安全に管理し、空調管理を行うための維持コストに加え、ハードウェアの交換コスト、並びに組織の成長に合わせたストレージ容量の増加コスト等が発生します。従って、オンプレミスはSaaSよりも運用コストは高くなる傾向にあります。しかし、どちらの運用方法を選んだとしても、テクニカルな問題をサポートするヘルプデスクの設置は不可欠です。
- ハードウェアとソフトウェアに関して、追加で発生するコストには他にどのようなものがあるか?SaaSまたはオンプレミスのどちらを選んだとしても、パソコン、タブレット、プリンター、スキャナー、ネットワーク機器等の追加のハードウェアが必要となります。これらのハードウェアは既に組織内で使用されているかもしれませんが、ITチームはこれらの機器がEHRに準拠しているかどうかを確認しなければなりません。もしEHRに準拠していない場合、これらの機器をアップデートまたは交換するのに追加コストが発生します。又、エンコード、分析、電子署名、カスタマリレーションシップマネジメント等の関連タスクにおいて必要となる、他社製ソフトウェアコストも考慮する必要があるかもしれません。
- EHRの導入のため、どの程度の人件費がかかるのか?EHRシステムを導入している多くの組織が、システム管理とその導入に必要な人の両面において、多額のコストを負担しています。具体的には、次のようなコストが発生します。
- 内部スタッフ: 残業代やEHR業務を行うスタッフの人件費が発生します。
- コンサルタントスタッフ:スケジュールの管理、問題の解決、ベンダーが契約上の責務を果たしているかどうかを監視する、フルタイムのプロジェクトマネージャーを任命する必要があります。ソフトウェア導入の経験のあるスタッフがいない場合、その経験者を雇う必要も出てきます。
- 管理者の変更:EHRシステムを導入することによって仕事のやり方が変わる可能性があるため、スタッフにとっては大きなストレスとなる場合があります。多くの組織は、新しいシステムへの移行を円滑に進めるため、現人員の期待や不満を効果的に管理するため、外部の人員を採用しています。
- ユーザーサポート:ソフトウェア導入の成功は、ユーザーがソフトウェア導入の初日にどの程度業務を円滑に進めることができるのかにかかってきます。ユーザーが新しいシステムを使ってスムーズに業務を行えるようになるためには、システムに関するマニュアルやシステムトレーニングが不可欠です。多くのベンダーが、「トレーナーを教育する」だけに留まります。つまり、従業員をトレーニングするトレーナーだけが、システムに関する教育を受けているということです。従って、最初のロールアウト時に必要となるトレーニング費用、新入社員に対して行うトレーニング費用、更にはシステム変更後に追加で必要となるトレーニング費用が必要となってくるでしょう。
又、新しいシステムの教育期間中に低下する生産性をカバーするための人件費等、プロジェクトに直接関係のないコストも考慮しなければなりません。
- 継続的に又は定期的に発生する費用にはどのようなものがあるのか?継続的に発生する費用には、ソフトウェアのアップデート/メンテナンス費用、テクニカルサポート費用、サービス手数料/ホスト料、取引手数料、ヘルプデスク/サポート費用、トレーニング費用、データストレージの追加費用等が含まれます。正式に契約を交わす前に、これらの費用が将来変化する可能性があるかどうかを理解しておく必要があります。例えば、契約内容はソフトウェアの使用頻度、あるいは1年あたりの処理数やシステムユーザー数などのメトリックに基づいている可能性があります。従って、組織の成長予測を利用規約と比較し、使用料金増加の可能性をある程度予測する必要があります。インフレによる物価上昇を考慮に入れることも、大切です。
- ソフトウェアの更新費用または解約費用について知っておくべきことはないか?正式に契約を交わす前に、契約の更新条項をしっかり理解しておかなければなりません。多くのEHRベンダー契約は、契約期間の前(通常少なくとも6か月前)に、契約を解約したい旨を書面にてベンダーに正式に通知しなければなりません。この書面による解約通知を行わない限り、契約は自動的に更新されます。契約の更新時に契約料金が上がることが多いため、料金の改正がどのように行われるかについても理解しておかなくてはいけません。契約内容に、料金値上げの上限等が含まれていることが理想的です。解約条項も、しっかりご確認ください。契約を解約する際、追加料金を支払うことになる可能性があります。例えば、初期費用を複数年にまたがって支払う契約内容の場合、理由なしに契約を解約してしまうと、これらの費用を支払う必要が生じる可能性があります。これらの契約内容はベンダーにとって有利に働く場合が多いため、御社が不必要なリスクを被らないよう、十分注意する必要があります。
- 追加のソフトウェア開発費用等は発生するかどうか?この可能性はあります。EHRシステムの導入において発生する隠れたコストのうち、政府による規制要件がその大部分を占めています。政府が発令する規制内容は、通常、ベンダー提供のアップデート/パッチに含まれています。しかし、州または国の要求に基づくアップデートは、クライアントにそのコストが請求される場合があります。ソフトウェアへのカスタマイズが長期にわたって必要となる場合、ベンダーのテクノロジーの変更に対応するためにこれまでのカスタマイズを更新する必要がある場合、追加費用が発生する可能性があります。又、レガシーシステム、過去の健康記録情報、EHRアーカイブの維持費等も発生してくるでしょう。
これまでに多くのプロバイダーが、EHRシステムを契約した後に苦い経験をしています。その中で彼らが学ぶことの一つが、ベンダーのTCO予測に頼ってはいけないということです。システムの運用期間にわたって発生すると考えられる全てコスト(明確なものだけでなく、隠れたコストも含む)を特定し、TCOを正式に契約する前に予測することがとても重要です。
EHRシステムのTCOを算出する方法及びその詳細については、ぜひお気軽にプラントモランにお問い合わせください。