キャリアが上がっていくにつれ、成功を収めるには、個人的なスキルや能力以上に周囲の人間と如何に協力し、関わり、動いてもらうかがより重要となってきます。組織の未来の成功のために次世代リーダーがフォーカスすべき5つの点を以下に説明します。
1. 影響力
いいアイディアとは、周囲からのサポートが得られてこそいいアイディアとなり得るもの。では、そのサポートを得るには?
- 周りの人間の言うことをよく聞く訓練をすること。早い段階で周囲からの意見を聞くことは自分の考えや提案をまとめることに役立ちます。周りの人間の意見に耳を澄ませることで双方向のコミュニケーションが可能となり、意見を言う方も尊重されていると感じられます。
- 「自分が正しい」という考えを捨てること。次世代リーダーには、正しくあることよりもより効果的であることの方がより重要です。周囲との摩擦も避けられます。
- 組織が求める全体像に沿って、自らのアイディアをまとめること。一つのアイディアがより良い計画を生むことを示せれば、その説得力も増します。
2. 協業
変化が目まぐるしく起こり、情報が絶え間なく流れ込んでくる現代社会では、自分のゴールを達成するには周りとの協力も不可欠。様々な見方を共有することで、組織としての創造力が高まり、イノベーションを生みます。一つの目標に向かって共に努力し、周りの協力を仰ぐことのできる風潮は組織内の仲間意識を形成し、組織としての強みに繋がります。
「アンサンブル」という言葉があります。そもそもはミュージシャンやアーティストが協力して演奏や創作活動を行うことを指しますが、組織においても、プロジェクトを行う際、異なるメンバーがプロジェクトの各段階で集まり、それぞれの持つスキルを持ちよることで、問題をその場で解決できるという、アンサンブル・アプローチが利用できます。また、アンサンブルは常にメンバーが貢献することを求めるので、各人がより積極的にことに当たろうとします。
3. 機敏性と即興性
現代のリーダーには、目まぐるしく変わる環境に対応し即座に適切な判断を下す能力が求められます。新しい情報を進んで取り入れることで機敏性が育てられ、組織は適応し、前進し、進化することが出来ます。
機敏であるためには、リーダーは時に情報や状況が不十分かつ不明確なままに決断を下さなければなりません。そうしなければ機を逃し、不決断や極端なリスク回避の社風を育ててしまう恐れがあります。組織は、大きな変化にのぞむ前に、ベータ・テスト、パイロット・スタディー、プロトタイプを活用することで、早く学び、適応することが出来ます。
即興性とは、行動における機敏性のことです。予期せぬ出来事の際に臨機応変に調整・修正・創造が行える能力です。即興性における原則は、「Yes, and…(そうだ、だから。。。)」です。それは、リーダーや組織にとっては、1)現在の状況、または「今」への集中、2) 他のメンバーとの代替案の共同作成、3)新たな情報や状況に応じたアプローチの修正、4)今ある人材、スキル、リソースでやり遂げる意思でやっていく能力を意味します。
4. 成長の発想
次世代リーダーにとって、学び、成長し、適応する能力を周囲に示せることが成功への鍵となります。目まぐるしく変わっていく世界において、固定観念を持ち続け、新たなスキルを学ぶことのないリーダーより、学び続ける意思を持ったリーダーの方が優位に立てます。Carole Dweck教授は、「成長の発想」とは、1)新しいスキル取得のために努力すれば能力を向上させることが出来るという信念、2)現在の安全地帯から抜け出して新しい領域を探索する前向きな姿勢、ならびに3)学ぶとは一度限りのイベントではなく過程であるという観念、であると定義しています。
また、学ぶということにより、過去を繰り返し考えたり、責任を追及することよりも、重要事項を学習したり、新たなアクションプランを立てたりすることに焦点を置くことで、個人および組織の回復力を伸ばすことができるとしています。成長の発想を持つことで、批判的になるのではなく、個人の成長と学びを支えるという利点がもたらされ、個人・組織の両方を未来志向に導くことが出来ます。
5. アカウンタビリティ
どのように望んだ結果をもたらすか。次世代のリーダーにとっては、アカウンタビリティ、より厳密に言えば、アカウンタビリティを社内に育てる能力は、最も習得が困難な特質と考えられます。
「自分たち」vs.「その他の人たち」という発想が、アカウンタビリティの重要な要素となります。先ず大事なことは、自分以外のリーダーや部署とアカウンタビリティをシェアすることです。そして、組織もしくは部署単位の目標達成のための、ソリューションに特化したアプローチを取ることで、様々なリーダーや部署がチームとなって問題解決を行うことが出来ます。ほとんどの組織が、危機に直面して始めて、皆が一致団結する必要性を知ることになります。従って、平常時の時にこそ、皆で事にあたるマインドを育てておく必要があります。
人は、自分に何が期待されているかを知っている時に、最善の行動をとります。しばしば、組織は戦略や包括的な計画を作るために多くの時間と労力を費やします。しかし、非常に多くの場合、リーダーは、組織が目標を達成するために、各人に対し、何をすることが期待されているのかを明確に説明出来ていません。その人に何が期待されているのかを正確に伝えることで、個人的なアカウンタビリティやオーナーシップが向上します。また、人材の育成やコーチングはアカウンタビリティを育む上で大切です。建設的なフィードバック、よい働きぶりに対する労いの言葉、チャレンジングで少し難しい業務を提供することで、スタッフは成長し、ふさわしい言動を身につけるようになります。継続的なフィードバックとコミュニケーションはスタッフにとって有益であるのみならず、人材のレビューはスタッフを育てるリーダーのアカウンタビリティーを向上させることにもなります。
楽観的であること
弊社のマネージング・パートナーであるGordon Kraterは、ある年のファーム・コンファレンスの中で、「人は悲観的なリーダーより楽観的なリーダーについていくものだ」と話しました。「ネガティブな情報を繰り返すより、未来明るいスポットを認識することの方が、スタッフにとってより遣り甲斐があり、士気が上がるのだ」と。
楽観的な観点を大事にしましょう。結局は、楽観的でなければ、周りを納得させたり、協業を促したり、機敏性と即興性を持って決断を下したり、成長の発想を持ち続けたり、アカウンタビリティを培っていくことは難しいでしょう。