2021年を楽観視できる理由はたくさんあります。COVID-19のパンデミックによってもたらされた途方もない問題にもかかわらず、現在の環境でも、ミドルマーケットのメーカーは繁栄を続けています。特にEコマースや高度な製造技術を活用したビジネスは、これまでも、そしてこれからも成功を収めていく可能性が高いと考えられます。
また、低金利が続いており、借り入れやレバレッジをかけやすい環境が整っています。そのため、健全な企業は、資本金や資金調達の可能性を享受できます。投資家の取引活動は引き続き加速しており、買収と売却の両方の機会が生みだされています。エネルギーコストは、歴史的基準では比較的低い水準にとどまっています。消費者の信頼感は、ここ数カ月でやや減速しているものの、2020年初頭よりもはるかに高い水準で年末を迎えることと思います。
とはいえ、パンデミックや継続的な人材不足による影響が長引いたり、大きく変化するという逆風が発生することが考えられます。グローバルな舞台では、競争と統合が激化し、十分な資本を持たない企業の成長は厳しい見込みです。
最近承認されたワクチンが今後数ヶ月の間に広く流通する可能性があります。そのことを考えると、今年は潜在的な需要が緩み、企業が競争上の優位性を見極め、革新と再発明を受け入れる新たな機会が生まれると予想されます。
ほかに何が待ち受けていますか?ここでは、2021年以降のミドルマーケットのメーカーに影響を与える可能性の高いテーマとトレンドをいくつかご紹介します。
経済の見通し
2021年の見通しは楽観的です。しかし、注意点が一つあります。信じられないほど堅調だった2020年第3四半期のリバウンドが急減速している兆候がいくつか見られていることです。昨年の春のような比較的短い期間とはいえ、解雇が増加し、消費が減速していることから、近い将来、成長がさらに鈍化、あるいはマイナスに転じる可能性があるとの見方が強まっています。パンデミックがなければ、長期的な拡大サイクルに入る前に第3四半期の堅調なリバウンドがトレンドを小幅に上回る水準で落ち着くであろうと予想されていました。しかし、最近ではCOVID-19の感染拡大の兆しが見られ、国内の様々な場所で規制の実施や延長が行われています。結果としてさらなる減少が予想されています。第1四半期には、より厳しい減少が予想されます。
そこからの見通しは少し明るいものです。両党が家計支出を維持するための協定を結んでも、政府からの財政支援も期待できます。低金利のため、インフラに関する法案がどこで優先されるかは不明ですが、インフラに関する法案を出すには絶好のタイミングとなります。要するに、財政支援は、目先のリスクが沈静化すれば、経済にとって大きなプラスをもたらすものとなるということです。
復興、戦略、運営
COVID-19のパンデミックが発生する前の過去10年間、米国は経済発展してきました。多くの中堅企業が成長し、過去最高の利益を出してきました。しかし、景気の波には弱点が隠れており、COVID-19はその弱点を露呈しました。給与所得保護プログラム(PPP)の融資という形で連邦政府は多くの企業を援助しました。しかし、今年の前半には多くの企業が淘汰されることが予想されます。流動性、リーダーシップ、顧客維持の問題は、近い将来の実行可能性に影響を与えることになります。
COVID-19で悪化したメーカーの痛手は今後も続くと思われます。失業率が高いにもかかわらず、複雑な機器を操作する熟練のオペレーターの人材が不足しているという状況が続いています。様々な意見がありますが、パンデミックに関連した産業の企業の開業と閉業が相まって、政府の刺激策が従業員の復職を阻害する要因となっていることもあり、労働力の乱高下が生じています。
ミドルマーケットの多くのメーカーは、ロボットプロセスの自動化などの技術によって、熟練したスタッフの人材不足に対処しています。実際には、労働力がインダストリー4.0テクノロジーの採用を拡大させる重要な要因となっています。多くの分野を牽引しているもう一つの要因は「顧客」です。防衛関連業者のための新しいサイバーセキュリティ基準を例に考えてみましょう。顧客は、強化された技術を利用した相互作用を企業に求めており、新しい基準では、コンプライアンスを実証するための外部監査が求められています。刻々と変化するサイバーセキュリティ環境に追いついていなければ、事業運営、財務パフォーマンス、顧客との関係を危険にさらすことになります。
国際的な競争力
2021年に向けて、関税や貿易が注視する必要があります。クライアントから、鉄鋼とアルミニウムに対する関税の大幅な引き下げが期待できるかどうかと聞かれることがあります。答えは「いいえ」です。
とはいえ、追加関税ではなく、より外交的で多国間的な貿易へのアプローチや同盟国との協力関係の再調整が必要になる可能性があると考えられます。例えば、インドとの接触が増えるかもしれません。しかし、インドは最近署名された地域包括的経済連携協定の一部ではありません。
また、ミドルマーケットでは、企業が海外に委託していた業務や製造などを自国内に戻すリショアリングの議論が盛んに行われています。マスク等、個人の安全を確保するアイテムの分野など、ターゲットを絞った取り組みは奨励されると思われます。より広範な再輸出の刺激策を待つのはやめておきましょう。リショアリングには魅力があり、場合によっては好ましいビジネスの動向につながる可能性があります。例えば、メキシコへのニアショアリングについては、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を導入することで、より戦略的なものとなります。
強力な刺激策が期待できるのは、輸出を支援するための雇用創出です。海外展開を躊躇している場合は、今年は海外進出に関連した輸出プラットフォームや戦略を見直す良い機会となります。
ここ数年、米国の外資系投資は減少していましたが、現在は上昇傾向にあります。ミドルマーケットのメーカーは、外国人投資家に向けてマーケティングを開始する準備をしておくべきです。アナリストによると、来年の世界経済の回復に伴い、投資家はリスクの高い資産を選択し、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利をゼロに近い状態に維持しているため、米ドルの下降圧力が強まるとみられています。
もう一つ、よく聞かれる質問があります。ミドルマーケットのメーカーはどこまでサプライチェーンに注力すべきですか、という質問です。答えに驚かれるかもしれません。「それほど注力すべきではありません。大げさに考えないでください。」というのが答えです。中国を中心にアジアに投資している企業を対象にした調査では、それらの企業は大きな変化を予定していないことが示されています。貿易政策やビジネスの成熟に伴い、他のアジア諸国への多様化が進むと予想されます。一方で、多くの製造業者にとっては、時間の経過とともに、アジアでの事業拡大の機会が増えていくことになります。
税務に関すること
2020年にCOVID-19関連の税制が改正されました。これらには、控除額の増加および加速化、事業利息費用の制限の緩和、慈善寄付の控除可能性の強化、繰越欠損金の繰り戻しが含まれています。企業活動への刺激策としては、給与所得控除、給与所得税の繰り延べ、PPPローンなどがありました。パンデミックが続いている環境と現在の超党派的な見解や新たな景気刺激策への支持を考えると、さらなる税制上の優遇措置や追加の刺激策が出てくる可能性が高いと思われます。メーカーは、2020年に制定されたプログラムの継続または拡大、および可能性のある新たな税制優遇措置について、引き続き法制化の動向を注視すべきです。注目を集めているのは、PPPローンの収入で支払った適格費用の損金算入の問題です。2020年の初めに、IRSは免除されたPPPローンは非課税所得になるが、それらの資金で支払われた費用は控除対象外であると裁定しました。最近成立した法案では、費用の控除が可能となっており、パンデミックの後期に向けて牽引力を得ようとしている事業者に対して、キャッシュフローにプラスの影響を与えるはずです。
その他の潜在的な税法の変更点としては、法人税率、適格事業所得控除、事業利息費用の制限、国際的な税制、製造業のオンショアリングに対する新たな刺激策など、注視すべき点があります。ジョージア州の上院選の結果は、上院のパワーバランスを決定する上で重要です。ひいては重要な税制提案の可能性を決定することになるからです。
結論
私たちは気を引き締めながら、楽観的な気持ちで新年をスタートさせています。成長計画を抑制してきた多くの健全な企業が、旺盛な需要と新たなチャンスに対応して前進しようとしています。
年を越すにあたって行っておくことは、身軽であることを心掛け、技術やイノベーションを活用し、不測の変化に迅速に対応できるようにしておくことです。事業や製品構成が変化する中で、戦略的に成長し、確実に成功を収めるためには、実際の影響と具体的な競争上の優位性(潜在的なリスク)を理解することが特に重要になります。
売り上げと成長のために能力を伸ばしレベル設定をすることで、ビジネスに与える影響についてもっと知りたいと思いませんか?世界市場で比べてみませんか?新しい税制改正やインセンティブに備えて賢く計画していますか?弊事務所の視点をお伝えできますので、お気軽にお問合せください。