2020年11月の選挙結果は確定段階の途中ではありますが、米国の主要なほとんどの州で当選者の発表が行われています。いくつかの州では再集計や決選投票が行われると思いますが、弊事務所は、今後数ヶ月と数年間の潜在的な税政策の影響を見通すことができるようになりました。重要な税法の変更は立法プロセスの対象となるため、議員間の交渉が必要となります。しかし、選挙結果やジョー・バイデン氏の選挙綱領、最近の税法の動向などを考慮すると、今後議論される可能性のある税法上の問題を推測できます。
これまでの状況 (2020年11月13日現在)
税法改正の可能性を検討する際には、誰が大統領になるのか、米国下院で過半数を保持するのはどの党か、上院を支配するのはどの党か、という選挙結果が鍵となります。現在入手可能な選挙結果をもとに、現在の予想を記載します。
- 大統領:ジョー・バイデン
- 下院(過半数218議席):
- 民主党:218
- 共和党:202
- 結果が確定していない、または決選投票が必要な議席:15
- 上院(過半数51議席):
- 民主党:48
- 共和党:50
- 決選投票が必要な議席:2
ほとんどの主要な報道機関はジョー・バイデン氏が大統領選に勝利すると予測していますが、議会でのパワーバランスはまだ決定していません。現在、民主党が下院で過半数を維持すると予想されていますが、正確な議席数はまだ確定していません。上院の選挙結果もまだ完全には確定しておらず、1月に行われるジョージア州での決戦投票が完了するまでは、上院の最終的な構成はわからないと考えられます。しかし、大統領選と議会選挙の両方をめぐる論争は、再集計やその他の法的手続きを経て、今後数週間の間も続く可能性があります。
今後の税制改正への影響
上院選の最終結果次第では、今後の税制改正が抑制される可能性があります。共和党が上院において僅差でも過半数を維持できた場合、税制の立法には、民主党の全会一致の支持に加えて、1人以上の共和党の支持が必要となります。または、上院の議席が完全に50:50の状態で、同数投票が必要な場合は、副大統領が投票し、党員間の同意が得られれば、民主党の提案を前に進めることができます。いずれにしても、両党の上院議員が、ジョー・バイデンと民主党政権下の下院で支持される税制案の将来を変える可能性があります。大幅な税制改正が進む可能性はありますが、分裂している政府の見通しは、取引を含む大きな変化を示唆している可能性があります。
バイデン政権で考えられる変化
ジョー・バイデン氏の選挙綱領で説明されている税務政策の目標を見てみると、変化の対象と見なしている分野のいくつかの指標がわかります。しかし、これらの提案の今後の見通しは、上院の最終的なパワーバランスにかかっています。
バイデン氏の綱領では、株式会社に対する所得税率の引き上げ(21%から28%への引き上げと、法人の帳簿上の所得に対する新たな15%の最低課税)と、個人の最高税率を37%から39.6%に引き上げることを提案しています。給与税案は、40万ドルを超える賃金所得と自営業の所得を社会保障給与税の対象とするものです(現在、6.2%の税率は賃金所得の137,700ドルを上限としています)。また、100万ドル以上の所得を持つ個人には、長期的なキャピタルゲインと適格配当金に対する通常の所得税率が課されることになります。バイデン氏の綱領では、パススルー企業所得の適用事業所得控除(QBID)の保持を提案しています。しかし、不動産投資家に対するルールの変更と、40万ドルを超える所得を持つ納税者のための控除の段階的な廃止を提案しています。バイデン氏の綱領には、米国内での新規事業の創出または事業回復を目的とした多くの新しいプログラムも記載されています。
バイデン氏の計画では、米国税制改革法(TCJA)に含まれていたいくつかの控除関連の変更が無効になる予定です。これには、州および地方税の控除制限(「SALT キャップ」)の撤廃、項目別控除の新たな制限(上限28%)の導入、項目別控除の所得ベースの減額の復活が含まれます。その他の提案には、所得税控除、扶養控除、子供税額控除の拡大、払い戻し可能な健康保険料控除、初めての住宅購入者控除などが含まれています。また、バイデン氏の案では、相続税に関し、税務簿価の調整(step-up in basis)を廃止し、税額控除を1,100万ドルから350万ドルへ引き下げ、税率を40%から45%へ引き上げるとしています。
今後考えられる他の税金の変更
議会のパワーバランスによってジョー・バイデン氏が選挙運動中に提案した税制変更の見通しを制限される場合は、代替案が党派を超えて支持される可能性があります。ねじれのある政府の環境においては、提案は、下院と上院の両方で過半数の支持を得られる範囲でしか進みません。現在、同様の状況が存在し、CARES法をはじめとするCOVID-19関連法案による税制改正が行われています。これらの税の動向を踏まえて、以下のような税制改正が議会で超党派の支持を得られる可能性があります。
- 景気刺激策または他のCOVID-19関連の税制優遇措置:2020年において、パンデミックの間に企業や個人を支援するための重要な税制改正が制定されました。これには、個人納税者への戻し減税、適格改良物件の減価償却費控除の繰り上げ、事業利息控除の増加、慈善寄付金控除の増加、繰越欠損金の復活などが含まれています。また、新たな給与所得税制度も創設され、雇用維持税額控除、有給病欠勤や有給家族休暇の追加控除、給与所得税の雇用者負担分の繰り延べなどが盛り込まれました。最後に、中小企業救済プログラム(PPP)の融資を通じて、経済支援が企業に拡大されました。パンデミックが全国の企業や納税者に影響を与え続ける中、支援を提供するための追加法案が制定される可能性が高まっています。これらの措置の中には、既存の議会の最後の週に採択される可能性もあります。
- ローン免除のプロセスや、ローン免除を支援する経費控除の扱いを明確にする可能性のあるPPPローンの拡充。
- 従業員持株控除や給与所得税の繰り延べなど、給与所得税の優遇措置の拡充。
- COVID-19の注意事項に適応した作業環境を構築するために改修を行う事業者を支援する新たなインセンティブの創設。
- 現在、控除の金額や時期を制限しているルールの改正の可能性。
- 事業主と従業員を支援するための現金の追加支給。
- 既存の租税原則の技術的な改正や修正: CARES法を拡張して、TCJAの結果として生じた既存の租税原則をさらに調整できます。これには、控除限度額の継続的な調整、技術的な修正、または将来の日付で失効するように設定されている条項の拡張が含まれる可能性があります。変更のタイミングは、経済全体の状況にも影響を与える可能性があります。例えば、事業活動の継続的な制限や状況の深刻化により、控除額の繰り上げや租税属性の活用など、さらなる税制改正が行われる可能性があります。
- 退職金口座の変更:超党派的な支持を得られる可能性があるもう一つの分野は、退職金制度を管理する規則の継続的な更新です。2019年12月下旬には「SECURE法」が成立し、退職金制度に様々な変更が加えられました。この法案は、必要な最低分配年齢の引き上げ、IRAへの拠出に対する税額控除額の増加、401(k)プランへの従業員の自動登録など、さらなる変更を行うものです。この法案は、最近、下院歳入委員会によって提出されました。
今後の動向
今後数週間から数ヶ月の間に、注目すべき3つの重要な進展がある予定です。第一に、ジョージア州の決戦投票、投票の再集計、その他の法的プロセスに関連した動向が含まれます。これらの結果は、上記の選挙結果を変更する可能性があります。第二は、現在の2年間の会期を終えるために議会が再開した際に、どのような行動をとるかということです。最後に、次期大統領や議会から、税制に関連する目標についてのシグナルを注視することが重要になります。バイデン政権の政策が法律になるためには両院を通過する必要があります。どの政党が下院と上院を支配しているかにかかわらず、議会のすべての議員には、法律の制定前に法案に影響を与える機会があります。多くの場合、最終的に制定される法律は初期の提案とは大きく異なります。
短期的には、納税者は2021年以降に適用される将来の課税規定について不安を覚えることでしょう。2020年まであと2ヶ月を切った今、COVID-19が提示する課題に加えて、年末の税務計画において、別の点を考慮する必要があります。残念ながら、ジョージア州の決戦投票の選挙は1月に予定されているため、上院の議席の最終配分がわかるのは年末以降になります。このような状況の中で、税務計画を立てる際には、納税者の事実や状況、既存のルール、ジョージア州での選挙の結果、2021年に施行される重要な税法の見通しなどを考慮する必要があります。その分析次第では、各納税者は今年中に特別な計画を完了させるべきかどうかを判断する必要があります。しかし、それ以外は、通常の年末計画を進めていく上で、税制改正への懸念が少なくなっている可能性があります。納税者は、いかなる場合でも、短期、中期、長期の税務計画の一環として、変化の可能性を評価する必要があります。
どのような変更があったとしても、それが法制化されるかどうかはわかりません。しかし、今後数ヶ月の間に税制についての議論が行われることは間違いありません。最新情報をご希望の方は、plantemoran.com/subscribeで国税の最新情報をご購読ください。
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